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開発メモ

AIに作業を任せても、確認する人は増えない——自動登録の件数をあえて減らした理由

更新 2026年7月27日
AIに登録作業を任せてみたら、詰まったのは人の目だった。件数を最大化するのではなく週5件前後に絞るという判断を示した図

AIに作業を任せると、つい「どれだけ多く処理できたか」を成果だと思ってしまいます。ところが受託しているECサイトの登録作業をAIエージェントに任せたとき、私たちが決めたのはその逆でした。週あたりの登録件数を、あえて少なく設定したのです。

理由は単純です。AIが夜通し働いても、翌朝それを確認する人は増えないからです。自動化を考えている方が同じ見誤りをしないように、どこで方針を変えたのかを書きます。

案件は、プロジェクタースクリーンを扱うECサイトです。手元のプロジェクターに合うスクリーンを探せる適合検索があり、新製品が出るたびに対応表へ手作業で登録していました。ここをAIエージェントの週次バッチ(毎週決まった時刻に自動で走る処理)に置き換え、深夜のうちに下書き登録まで済ませる仕組みにしました。

深夜に何時間動かしても、費用はほとんどかからない

深夜に走らせるようにしたことで、処理にかかる時間は気にならなくなりました。マシンが何時間動こうと、朝までに終わっていれば誰も困りません。

ここまでは順調でした。時間の制約が消えたのなら、あとは登録する対象を増やすほど得になるはずです。素直に考えれば、そうなります。

増やすほど、間違った対応表でお客さんが買ってしまう

ただ、このサイトが扱っているのは「どのプロジェクターに、どのスクリーンが合うか」という情報です。ここを間違えると、何が起きるでしょうか。

対応していると書かれた商品を信じて注文したお客さんの手元に、実際には合わない製品が届きます。返品や問い合わせで終わる話ではありません。その店への信頼が壊れます。

件数を稼ぐために精度を落とす。この案件では、そもそも選べる選択肢ではありませんでした。

「そもそも安全の優先度を下げると、誤った情報で登録するといった本末転倒なことがおこる。また件数を優先することで、結局人力でリサーチをすることになっては本末転倒。最も避けたいのは件数の少なさではなく、ユーザーが誤った情報をもとに購入してしまうこと
——設計を決めたときのメモより

詰まっていたのは機械ではなく、詳しいスタッフの目だった

設計を詰めるうちに、もうひとつ見えてきたことがあります。件数を増やそうとすると、結局どこかで人の手によるリサーチが必要になる、ということです。

それでは本末転倒です。自動化する意味は人の手間を減らすことにあります。精度を落として量だけ稼いでも、人が全部やり直すはめになるなら、自動化した意味そのものが消えます。

そして最終的に公開してよいかを判断するのは、必ず人です。しかもこれは誰にでも頼める作業ではありません。プロジェクターの型番や対応関係にある程度詳しいスタッフでなければ、AIが出してきた下書きが正しいかどうかを見抜けないからです。

つまり、この仕組みで詰まる場所は機械の処理時間ではありませんでした。その特定のスタッフが1週間に見られる量。それが全体の上限でした。

「多くは登録したかった。深夜バッチ処理にしているので、リサーチに時間がかかるのは全く気にならないが、これは結局最終チェックが人間になるため、そこがボトルネック。また、それは私ではなくて、プロジェクターの知識にある程度精通したスタッフが行うため、負荷を与えすぎないようにする選択をした」
——設計を決めたときのメモより

①AIが深夜に下書きを作る何時間動いても費用はほぼゼロ②増やすほど間違いのリスクが上がる合わない製品が届く=信頼が壊れる③最後に見るのは詳しいスタッフだけ型番の知識が要る=誰にでも頼めないここが全体の上限になる④件数を「見られる量」に合わせる週5件前後、3件でも可まで目標を下げた入口を出口の広さにそろえる臆病さではなく事故を避けるため

件数を絞ったのは、臆病だからではない

そこで、週あたり数件、状況によってはそれ以下でも構わないという水準まで、目標を意図的に下げました。マシンの時間がタダ同然なのだから最大化したい、という発想は捨てています。

これは渋滞と同じ話だと捉えています。出口が1車線しかない道に、入口から車を大量に流し込んでも、途中で詰まるだけです。無理に流せば事故が増えます。

だったら最初から、出口の広さに合わせて入口を絞るほうがいい。そのほうが全体としては速く、そして安全に流れます。

AIに任せるほど、確認する人の時間が効いてくる

以前AIにどこまで任せるかという記事で、戻せる作業は任せ、本番への反映は自分で止める、という線引きを書きました。今回の一件は、その線引きが実際の運用でどう効いてくるかの例です。

最後の判断を人に残す設計にすると、その人が処理できる量が、自動化全体の上限になります。AIに生成させる側のコストがどれだけ下がっても、この上限は動きません。

別の案件では、AIの「公開しました」という報告を信じたら、本番には何も反映されていなかったことがありました。あのときも最後に効いたのは、人が実物を確認する段でした。

AIに出させる量が増えるほど、確認する側をどう守るかが設計の中心になります。受託開発でのAI運用を、任せ方・権限・トラブルの面からまとめたClaude Code実務運用ガイドもあわせてどうぞ。

制作体制:一次体験・方針判断・最終確認は筆者が担い、構成・執筆・事実照合はAI(Claude)との協働です。
※本記事の内容は2026年7月時点のものです。

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