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開発メモAIに作業を任せても、確認する人は増えない——自動登録の件数をあえて減らした理由
AIに作業を任せると、つい「どれだけ多く処理できたか」を成果だと思ってしまいます。ところが受託しているECサイトの登録作業をAIエージェントに任せたとき、私たちが決めたのはその逆でした。週あたりの登録件数を、あえて少なく設定したのです。
理由は単純です。AIが夜通し働いても、翌朝それを確認する人は増えないからです。自動化を考えている方が同じ見誤りをしないように、どこで方針を変えたのかを書きます。
案件は、プロジェクタースクリーンを扱うECサイトです。手元のプロジェクターに合うスクリーンを探せる適合検索があり、新製品が出るたびに対応表へ手作業で登録していました。ここをAIエージェントの週次バッチ(毎週決まった時刻に自動で走る処理)に置き換え、深夜のうちに下書き登録まで済ませる仕組みにしました。
深夜に何時間動かしても、費用はほとんどかからない
深夜に走らせるようにしたことで、処理にかかる時間は気にならなくなりました。マシンが何時間動こうと、朝までに終わっていれば誰も困りません。
ここまでは順調でした。時間の制約が消えたのなら、あとは登録する対象を増やすほど得になるはずです。素直に考えれば、そうなります。
増やすほど、間違った対応表でお客さんが買ってしまう
ただ、このサイトが扱っているのは「どのプロジェクターに、どのスクリーンが合うか」という情報です。ここを間違えると、何が起きるでしょうか。
対応していると書かれた商品を信じて注文したお客さんの手元に、実際には合わない製品が届きます。返品や問い合わせで終わる話ではありません。その店への信頼が壊れます。
件数を稼ぐために精度を落とす。この案件では、そもそも選べる選択肢ではありませんでした。
——設計を決めたときのメモより
詰まっていたのは機械ではなく、詳しいスタッフの目だった
設計を詰めるうちに、もうひとつ見えてきたことがあります。件数を増やそうとすると、結局どこかで人の手によるリサーチが必要になる、ということです。
それでは本末転倒です。自動化する意味は人の手間を減らすことにあります。精度を落として量だけ稼いでも、人が全部やり直すはめになるなら、自動化した意味そのものが消えます。
そして最終的に公開してよいかを判断するのは、必ず人です。しかもこれは誰にでも頼める作業ではありません。プロジェクターの型番や対応関係にある程度詳しいスタッフでなければ、AIが出してきた下書きが正しいかどうかを見抜けないからです。
つまり、この仕組みで詰まる場所は機械の処理時間ではありませんでした。その特定のスタッフが1週間に見られる量。それが全体の上限でした。
——設計を決めたときのメモより
件数を絞ったのは、臆病だからではない
そこで、週あたり数件、状況によってはそれ以下でも構わないという水準まで、目標を意図的に下げました。マシンの時間がタダ同然なのだから最大化したい、という発想は捨てています。
これは渋滞と同じ話だと捉えています。出口が1車線しかない道に、入口から車を大量に流し込んでも、途中で詰まるだけです。無理に流せば事故が増えます。
だったら最初から、出口の広さに合わせて入口を絞るほうがいい。そのほうが全体としては速く、そして安全に流れます。
AIに任せるほど、確認する人の時間が効いてくる
以前AIにどこまで任せるかという記事で、戻せる作業は任せ、本番への反映は自分で止める、という線引きを書きました。今回の一件は、その線引きが実際の運用でどう効いてくるかの例です。
最後の判断を人に残す設計にすると、その人が処理できる量が、自動化全体の上限になります。AIに生成させる側のコストがどれだけ下がっても、この上限は動きません。
別の案件では、AIの「公開しました」という報告を信じたら、本番には何も反映されていなかったことがありました。あのときも最後に効いたのは、人が実物を確認する段でした。
AIに出させる量が増えるほど、確認する側をどう守るかが設計の中心になります。受託開発でのAI運用を、任せ方・権限・トラブルの面からまとめたClaude Code実務運用ガイドもあわせてどうぞ。
※本記事の内容は2026年7月時点のものです。


